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zoom RSS あとみよそわか…、幸田露伴のしつけ

<<   作成日時 : 2009/05/14 10:37   >>

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 明治の文豪である幸田露伴(こうだ ろはん)とその娘である文(あや)のお話。文は幼い頃に生母を亡くし、父露伴は後添えをむかえたが、継母は学はあるが、家事・躾けには無放任な人であった。そのため父露伴が娘文に家事一般の躾けを教え込んだ。「あとみよそわか」とは、父娘が掃除の仕方の稽古をしていた時に露伴の口から出た言葉である。掃除の勉強第一日目は、掃除道具を整える事から始まった。曲がった箒の穂先を水につけて真っ直ぐにし、掃き目のいろはを習う。はたきに到っては、一から道具を作ることから習う。いわく、はたきの房は和紙の原稿用紙の反故で作る。短く軽く。「弘法筆をえらばず」は、愚説であって「名工はその器(うつわ)をよくす」が確かなところだと習う。はしご段は一段一段あがるものだから、二段も三段もまたぐことは無理と、その日の稽古は終了。

 父に「ありがとうございました」とお辞儀をしてさがろうとすると「あとみよそわか」と声がかかる。娘が振り返ると「女はごみっぽいもんだから、もういいと思ってからももう一度よく、呪文をとなえて見るんだ」と父は云った。「あとみよそわか」の呪文の意味は、どうやら昔からある言葉で、「あとを見よ、そわか…」のそわかとは、梵語(仏教語)。例えば「般若心経」の最後から二行目の「菩提薩婆訶(ぼうじそわか)」から来ているものだと云う。ものが成る時(成就)、人の去り際(亡くなる時)、何かから境遇を脱する時、その際(きわ)を振り返り「あとみよそわか、あとみよそわか」と呪文に唱えて、物事の成るを願う。成るか成らぬかの是非を心に留めるように、振り返れと云うことらしい。

 障子の扱いが上手く出来ないでいると、「ふむ、おこったな、できもしない癖におこるやつを慢心外道という」と叱咤される。糊を煮て、あまり固過ぎてはいけないと、小言を言われる前に、気をきかせて水を入れてかき混ぜ、かえってぶつぶつのあるダマにしてしまうと、「余計な自分料簡を出してサル(猿)をやったのは、孔子様のおっしゃった退いて学ぶに如かずという訓えをないがしろにするものだ」とやっつけられる。母の無い子は、父に見棄てられるのが辛い。稽古の厳しさに腹を立て、泣く、愚図る、歯を剥くことはあっても、自分からダメになってぐちゃぐちゃと崩れ折れることはしなかったと云う。

 娘が離婚して家に戻ると、鋤鍬(すきくわ)持たせて農業をさせ、ついには肥え桶担がせ、庭に端正な菊を育てるに到る。

 幸田文の随筆「父・こんなこと」は、そうした事柄の書かれた、清々しい本である。

父・こんなこと (新潮文庫)
新潮社
幸田 文


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内 容 ニックネーム/日時
「父・こんなこと」幸田文著(新潮文庫)には、『啐啄同時(=そったくどうじ)』という禅の言葉が出てきます。少子高齢化のこれからの時代には必要な考えであると思います。
書店員
2015/05/26 07:46

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